セッション定番曲 Beatrice 作曲者はSam Rivers
まずは、コードやメロディを確認しましょう!
私はこの曲を初めて聴いた時にふわふわした曲だなという印象を持ちました。この曲がなぜふわふわしているのか考えてみましょう!
Beatrice聞いてみよう!
ぜひ聞きながら読んでください
コード進行を分析しよう!
この譜面コード進行と音源のコード進行が明らかに異なる箇所があることに気がつきましたか?
3段目の最後の小節「Dm7」これは音源ではD△になっていますね
このように譜面に書かれている内容と実際に演奏される音楽は異なることがあります
そして自分が想定しているコード進行と、周りの人が演奏する内容が異なることはセッションなどでも起こります。
しかし、いきなりセッションで聞き分けるのは本当に難しいので、
このように分析を繰り返す中で聞き分けられるようになりましょう!
今回はこの譜面に沿って解説しようと思います
平行移動に潜む調性感
・FM7 GbM7#11 FM7 EbM7#11
一段目を見てみましょう
KeyはFです。トニックから半音上のGbM7#11
これはメジャーコードの平行移動です
と、この一言で分析をやめてもいいんですが、GbM7#11から導かれるGbリディアンは
Dbイオニアンスケールです。つまりDbメジャースケール!
FとDbの関係について考えてみましょう!
ポイント
Dbメジャースケールの平行調はBbマイナースケールです。そしてこのBbマイナースケールとは、元のキーのFにとってサブドミナントマイナーですこれはサブドミナントマイナーKeyから借用してきたコードと捉えることができます。
一方Eb#11(Ebリディアン)はBbメジャースケール内のコードです
実はここでSDの調(Bbメジャー)へと転調しています。
この転調は続きのコードから判断されます。
・Dm7 EbM7#11 Dm7 Cm7 Bbm
DmはFメジャーKeyのダイアトニックコードなのでFに対するⅥmと解釈してしまいそうになるかもしれません。
このDm7は機能としてはトニックマイナーではなく、Bbメジャースケール上のⅢmです。
そしてEbリディアンへ向かうコードです。
Dm7はⅢm 7
Eb M7はⅣM7
Dm7 はⅢm7
Cm7は Ⅱm7ですが、ここで実はF調に転調しています
CmはF調にとってのⅤmです。サブドミナントマイナーからの借用です。
このCmがF KeyにとってのⅤmと、Bb KeyにとってのⅡmとなっていています。
Cm7の直前のDm7は転調前のFメジャーキーにも、転調後のBbキーにも含まれています
このような共通のコードをピボットコードと言います。
転調する際に度々登場するので覚えておきましょう。
そしてBbmはⅣmです。
因みに、もしFメジャー調と解釈すると
Ⅵm ⅦbM7 Ⅵm Ⅴm Ⅳmとなります。
ダイアトニックコードが全然出てこなくてわけわかめになります。でもこのように、〇〇かもしれないと思って解釈してみることはとても大切です!
・Am7 BbM7 Em7-5 A7 Dm7
ここでまたKeyがFメジャーにもどります
Am7,BbM7はⅢm7 ⅣM7
Ⅶm7-5 Ⅲ7 Ⅵm7 ですがこれはDmへの2-5-1と捉えることができますね
・Gm7 GbM7#11 Fm7 GbM7
Fメジャースケールのまま解釈すると
Gm7はⅡm7
GbM7はⅡbM7
Fm7はⅠm7
GbM7はⅡbM7
このようになりますがスッキリしませんね。
実はこれまでと同じように転調していると考えるとスッキリします。
Gm7はⅡm7
そしてこの後Dbメジャー(Bbm)キーに転調したと考えます
GbM7はⅣM7、Fm7はⅢm7
最後のコードはⅣM7です。
サブドミナントマイナーの平行調のⅣは元の調の半音上のⅡbにあたります
これはメジャーコードを平行移動させた時にも滑らかに進行することができて面白いです!
冒頭でベアトリスはふわふわした曲と紹介しましたが、ふわふわしている理由はこのように転調を繰り返しているからなんですね。
元の調に対してSDやSDmへ転調するとこういったサウンドが得られるということを整理すると、これらの調の別のダイアトニックコードを起点に転調させたりリハーモナイズさせることで、アプローチが増えますね!
このように整理することで、演奏することだけに止まらず、こういう曲を作るにはどういうコードをつければいいのか?という視点を高い解像度で持つことができます。
ところで半音上のメジャーセブンスって、前回のオングリーンドルフィンストリートにも出てきました
前回は平行移動とだけ紹介しましたが、そう実はSDmからの借用と考えることもできますね。
On Green Dolphin St.ではルートの移動、クリシェラインを作ることから平行移動を連想させやすいと感じたのでそのように紹介しましたが、同じような機能を持つコードでも前後のコードの関係によって、解釈が分かれて来るのも面白いですよね。
まとめ
パッと見た感じダイアトニックコードを行き来しているように見えるコード進行でも、機能がつぎはぎになっている場合や、ノンダイアトニックコードとの掛橋になっている場合は、ピボットコード(共通和音)を使用した転調が潜んでいるかもしれないと考えることでアナライズの精度は高くなるでしょう!
Beatrice完全に理解した
ということでBeatriceのアナライズ編でした!
転調の手法という項目で作曲や編曲、アドリブ演奏の引き出しはとても多くなります!
次回は、アナライズはわかったけど「さて、どう弾いてやろうか」という実践編を更新予定です!
以下は有料ゾーンです
有料ゾーンではもう少しピボット転調について理解を深めて行きましょう!