古典と現代ジャズのはざまの曲 Windows 前回のアナライズ編に続き実践編です!この記事ではチックコリア本人のソロを分析します!
結局、本人を参考にするのが一番いいですからね!作曲意図も透けて見えます。アナライズ編をまだ読んでない方は是非よんでください!
※まず、ぴゅら子のジャズアナ会員の皆様は記事の下の方から
解説付きの譜面をDLしてからお楽しみください!
まずは、本人の演奏聞いてみよう
音源の56秒あたりから2:22までを耳コピしました
譜面付きの耳コピ動画
全体像を掴もう!
いきなりミクロな単位で考えずに、まずは全体的な分析をしていきましょう!
全部で2コーラス。譜面付き動画を見てもらったらわかると思うんですけど、リズム的なアプローチがめちゃくちゃ多彩ですよね!
3拍子という大きなビートの中で、8分音符を4つに割ったり、3つに割ったり。あるいは3連を4つに割ったりと自由自在です。
一方で使っている音は王道的です。意味不明なことはあんまりしていなくて理路整然としたフレージングです。展開ごとにコンセプトを感じることができるようなまさにお手本となる演奏ですね。
それでは具体的にみていきましょう!
Aセクションから学ぶモードの乗り換え
Aセクションはコード一つが4小節や8小節と緩やかに進んでいくモーダルな展開です。
1コーラス目のAをみてみると、丁寧にモードを切り替えているのが伺えます。
譜面けっこう凝ってるでしょ!
Bm7ではドリアンモードを使っています。
調としてはBmスケール(エオリアン)を使いそうなシーンですが、Bに対する長6度のG#が使われています。
さてマイナーコードの6thてアボイドノートと聞いたことはないですか?
短3度の音とトライトーン(増4度)を作るのでアボイドとなると説明のことです。
しかし実際にはこのように使用されていますよね。これは、Bm7というコード機能を果たしていないということなんですよね。Bドリアンを表現するためにはむしろ積極的に使われます。逆にm3であるDは避けられているように見えませんか?
モード的な展開では、3rdはここぞというときに取っておく音という印象があります。
今回はEトライアドとF#mという二つの隣り合うトライアドからヘキサトニックスケールを作っていると説明しました。
G#m7-5ではロクリアンナチュラル2スケールで歌っています。これはA#オルタードスケールの転回スケールです。細かいのですが3小節目ではハーモニックマイナースケールの転回系にモードを切り替えています。C#7thはFdim(E#dim)。これは3rdのディミニッシュ代理で頻出のビバップランゲージです。C#mへ向けたコーダルな機能を持たせていますね。
F#mではリズムをリフレインしています。このようにリズムモチーフを発展させるときは、何らかのスケールに沿って歌うのがセオリーですが、今回はC#mペンタトニックスケール内の音で歌っています。
一言でまとめると、シーケンスを変形させながら5音モード内でフレージングするアイデアと言いますでしょうか。このようなフレージングはペンタトニックを由来としていないようにも聞こえませんか?こういったフレージングは非常に使い勝手が良いので是非身につけたいですね。
D7sus4では、1.5拍のフレーズが繰り返されています。特徴的なリズムが気持ちいですね。
ここはDミクソリディアンモードでフレージングされているのですが、3rdの音は1度しか出てこないでしょう?先ほども書きましたがモーダルな転回において、3rdはここぞというときに引き出す音だと言いたいのが伝わりますか?
EM7(#11)はEリディアンモードです。ここまでメロディアスな展開が続いていましたが、8小節とゆったり切り替わるこの部分では、バッキング的なアイデアから入っています。しっかりと間を使うような構成は参考にしたいですね。
4度堆積和音を使った平行移動から、8分音符を4つに割るようなフレーズが、4小節目の3拍目の裏から始まり次のコード(譜面は見切れていますが)G#7の1拍目へ目掛けている。そんなフレーズです。
Aパートは複数のモードを切り替えながら進行していくパートです。
このようにコード間の接続が固くない進行では、複数のアイデアどんどん切り替わっています。それを掴む耳と、チックコリアのアイデアを参考にしましょう!
トライアドの可能性を模索しよう!
2コーラス目のBパートからCパートへの切り替わり部分(参考音源の2:00〜)
この譜面の7小節目のG#7からトライアドを接続しながらフレーズを作っています。
トライアドと聞くとシンプルなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、このようにスケールの一部分を抽出しながらトライアドをパズルのピースのようにしてスケールの全体像を少しずつ見せる手法は即興的でありながら、面白いフレーズだと思ったので紹介してみました。
G#△からB△まではダイアトニックコードを下るような組み立て方です。A7上のE△はDリディアンスケールから持ってきているか、次のEM7を前借りしていると捉えるかは解釈が別れそうです。
9小節目の「C#mとB△」その次の「G#mとF#△」のフレーズは平行移動フレーズです!ね。このフレーズの展開について語ろうとすると語彙力がなくなったんですけど
すごすぎるなと思いました。
さて、今回チックコリアのWindowsを耳コピ、アナライズしてみて思ったんですけど
ダイアトニックスケール超大切!
ダイアトニックスケールは極めて丁寧に取り組むべき練習課題の一つであることは間違い無いでしょう。
ということでWindowsの実践編でした!
今回紹介したアルバムは、ジャズをはじめて2,3年目のビギナーのときに何回も聞いていた音源なのですが、トランスクライブするぞぉと思って聞くと新しい音に見えてきますね。
耳コピが大切だとみんな口を揃えて言いますが、あまり得意ではない方からしたら「ふぇ〜ん耳コピできないよ〜」と思うこともあるでしょう。
私もあまり得意ではなかったのですがこんなふうに耳コピやってる姿をたまに見せることで、この記事を読んでいるあなたのモチベにつながればいいなと思います!そして何よりも、自分自身の研究を進めます。
記事をお楽しみいただけましたら幸いです!
下記の有料パートでは、今回の記事でも一部抜粋して使用した解説付き譜面のDLができます。