今回はChick Coreaの名曲Windowsのコード進行をアナライズします
モーダルな展開とコーダルな展開が入り混じる美しい曲です!
少し複雑な部分もあるので丁寧にみていきましょう!
Windowsを聞いてみよう!
ぜひ聞きながら読んでください
コード進行を分析しよう!
大きくA、B、Cの3つのセクションから構成されます。
それぞれのセクションに特徴があり、同じ曲ですけどそれぞれを取り出してみてみるとまるで違う曲のようにも見えます。しかし一つの曲としてみていくと統一感を感じることもできて美しいです。
さてAパートからみていきましょう!
Aパート
Bm7 はトニックマイナーです
そして短3度下のハーフディミニッシュG#m7-5 C#7
と進行します。
トニックマイナーに対して短3度下のハーフディミニッシュへの進行は
他の曲でもたまに聞くことができる響きです。(Dメジャーに対してIV#m7-5)
G#m7-5は構成音G# B D# F#をBから並び変えるとBm6になります。
G#m7-5は3小節という長い間、解釈が保留され宙ぶらりんの状態になりますが次にC#7が来た時にF#mへのⅡ-Ⅴモーションだということが明示されます。
F#m7 はチックコリアはF#ドリアン解釈で演奏しています。
D7sus4 これはAm7/Dといいかえてもいいでしょう。Dミクソリディアンモードです
処女航海やドルフィンダンスなどでもおなじみのコードですね
EM7#11はEリディアン
この8小節では、モチーフとなるメロディが拡張されています。
主題(メロディ)を拡張する手法をオーギュメンテーションといいます。
ジャズでは珍しいですが、バッハの曲などでは耳に馴染みがあるかもしれませんね。
Aセクションでは緩やかにモードを乗り換えながら進行しています。
モード的な展開の中では、そのモードの隣り合うダイアトニックコードを交互に進行させる手法がよくみられます。
例えばコード譜面にはF#m7(F#ドリアン)の指定があったとしたら、バッキングにはF#m G#mを交互に行き来するなど、指定されていないコードを付け足しながら演奏されていることもしばしばありますので、耳を傾けてみてください!
Bパート
このパートではAb7 A7が繰り返されます
通常このように半音の関係にあるドミナント7thコードは、Abとそれに対するドミナントの裏コード(Eb7の裏)と解釈するのが一般的です。
ステイブルメイツの時にも出てきましたね。(過去ステイブルメイツの記事はこちら)
Abのブルージーな感じと解釈することができます。
しかし、チックコリアの音楽的な背景を鑑みるとこのパートではスパニッシュスケールを想定していると考えるのが妥当でしょう。
そしてその場合は、Ab7はG#と解釈した方が適切かと思われます。
ルートの流れをみてみると、Aパートの最後のコードEからG# Aへという流れのほうが自然ですよね。
加えてスパニッシュスケールは、西洋音楽の文脈に慣れている私たちの耳には、フリジアンスケールを想起させるスケールでもあります。
フリジアンスケールにM3rd加えると8音スケールのスパニッシュスケールになります。
G#スパニッシュスケール G#,A, B, B#, C#, D#, E
Cパート
このパートではBメジャーに転調していると考えるとスッキリします。
しかし2段目がBbとフラットで表記されているせいで、BメジャーKeyであることがわかりにくくなっています。
EM7 EM7 /D# C#m C#m7 /B
Ⅳthからダイアトニックを下るルートです。
EM7 C#m7は同じ機能SDを持っています
Bbm7-5 Bbm7-5 /Ab Eb7 /G Eb7
これは
A#m7-5 A#m7-5/G# D#7/F## D#7
と表記した方が 7 6 5# 3という流れが見えやすいです
そしてドミナントモーションして
Abm7 Abm7/Gb Db7/F Db7
全音下がって同じことを繰り返しています。
そして最後に
EM7 D#m7 C#m7 C7
Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅱbと進行しています。
C7はコーラス頭のBmへのドミナントモーションです。
ポイント
BやDbなどの調が複雑に絡み合うコード進行を持つ時には一度KeyをCなどわかりやすい調に移調して考えることもとても役に立ちます!
またコードネームだけで分析するのが難しいシーンには、アドリブ演奏中の奏者の解釈を読み解くことも重要です!
まとめ
この曲は細かく取り立ててみると非常にたくさんのアイデアが固まって一曲になっていますね
Bマイナーから始まりF#ドリアン、Dミクソリディアン、Eリディアン、G#スパニッシュ、Bメジャーという流れを感じながら演奏しましょう!
Windows完全に理解した
ということでWindowsのアナライズ編でした!
次回は、最初に紹介した音源からアドリブパートの一部を譜面にします
偉大なジャズミュージシャンたちの演奏を参考にしながら「どう弾くか」という実践的な内容の記事を用意していますのでお楽しみに!